2014/07/11

クリック・モーメント まとめ 小さな賭けたくさん試行し、級数的エネルギーにひっかける


ルールが固定されている世界で生きているのか否かで世界観は大きくことなる。この本ではルールが固定されていない世界、つまり常にランダム性がある世界について語っている。良い本だ。

クリック・モーメント

クリック・モーメントとは『あの瞬間がすべての始まり』だったことを指す。この瞬間を増やすには下記が奨励されている。

・現在の目標とは直接関係ない物事に時間を割く。

・多様性のあるチームを作り、直接触れる接点の多い環境を作る。

・好奇心に従う。

・予測可能な道を避ける。

クリック・モーメントの瞬間は、幸福感、恐れ、興奮といった感情的な反応を引き出すことが多い。感情は大事だ。論理的な解決策に対する欲求をすっとばし、アイデアを次の段階に進めたいという強い欲求を生み出す。予想外の結果を生み出すのは驚きが関係していることが多い。

小さな賭け

成功するには次から次に賭けを行うことが重要である。一度に全てを賭けずに小さく賭け試行回数を増やす。最初の一歩も踏み出し易くなる。投資収益率を考えるのではなく、許容損失額を考える。何回失敗すれば成功するかはわからない。それを支えるのは情熱である。

複雑性エネルギー

級数的に発展するエネルギーに触れるためには、フックとなる場所が必要である。つまり行動だ。一度相互作用が増えればその後の成長早い。このような幸運に触れた時は倍賭けをすべきである。

事後正当化

人間はどんな観察結果だろうが成果だろうが、データに合わせて結論を導けば説明できる。私達は何が起こったかを理解したいという欲求があるのでランダム性に頼った説明を受け入れることができず、詳細だが本質的には捏造された説明を好んでしまう。

ランダム性を受け入れる

人生はランダム性に支配されている。どんなに綿密に計画を練り、戦略を立てても、その通りに行くことは絶対にない。成功は偶然の出会い、思いがけず生まれた洞察、幸運な賭けから生まれる。

ランダム性を受け入れるのは有益だが難しい。この行動原理を何に依拠するか。それはスケジュール管理でも占いでもなんでもいい。それで事態を変化させられると考えられるならそれが正解だ。

ルールが変化するかしないか

1万時間に見られるような努力が成功の最大の要因になるもの、テニス、チェス、バイオリンなどは何年もの間ルールが比較的固定されている。創造性が固定されていると言うことができ、トップになるための方法を研究することができる。

戦略とは

戦略とは本質的には『解決策』を見つけることではない。成功はランダム性や偶然の結果だからだ。大事なのはある方向に動くことである。この際どの方向に向うかは問題ではない。

どの企業や戦略が成功するかを予測することは不可能である。成功した企業から成功の一般的な教訓を探し出すのは難しい。

■感想

自分にとってのクリック・モーメントと言えば2つぱっと思いつく。1つは若い頃に初めて競馬の専門誌を買ってみたこと。2つ目には横浜かどこかの本屋でたまたま手にした本が複雑系であったこと。この2つがその後の人生を決定付けている。前者は何かがあるといった漠然としたもの、後者は明らかな興奮があった。

部活やサークルに入る、あるいは恋愛と失恋などいったこともそうかもしれないが、その一点を突破口に観念の世界だけではなく実際の世界が開けるというのは誰にでもどの会社にでも起こることだろう。

これを支えているのは非対称性だ。行動したことによって開ける世界というのは級数的世界であり、その規模を事前には特定できない。一方でその賭けを行うのは単発な賭けである。どこかで一発当てたら大きい。こういった世界に実際生きているのが我々だ。

その上でひとつ気になったのは、全て成功確率は同じだからという部分と、その影響もまったく想像がつかないという部分だろうか。

実際は全てがランダムではないので、多少なりとも努力や技術でカバーできる部分がある。この部分がなぜ重要なのかというと、精神的なバッファーになるからだ。改善できる部分がない完全なランダム性は厳しいし、世の中そこまできつくはない。

影響する先も確率には支配されるものの、同じようにまったく推定できない訳ではない。無人島でどれだけ凄いプログラムを書いても世界には影響しない。そこには環境やテクニックが介在する部分が少ないながらも存在する。

このちょっとの部分が実際に行う際には大事だし、試行回数を支えるのは情熱だ、言うのは簡単だがその情熱はどこから生まれるんだよ、という部分も実際はランダム性に拠っているのが実情に近いところだろう。

ここらへんはもちろん本書の範疇外の話になるので致し方ない。たぶんそこが本書を読むと引っ掛かる人は引っ掛かる部分かもしれない。

とはいえ全編を通じて良い本だ。


**中国の中小銀行 高まるリスク

過去5年で中国のシャドーバンキングが増加している。これらの銀行は複雑なスキームを使い規制を逃れ高い利回りを提供してきた。これは経済が力強く発展している時は有効だが、その前提が崩れるとリスキーな投資と隣あわせだけにリスクが増大する。10のシャドーバンキングの保有する標準的ではないクレジット商品が総資産に占める割合は23.3%となっているが、2012年は14.3%であった。

**バークシャーの株主総会

バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株主総会が行われた。この中で今後500億ドルの買収をする可能性があること、レバレッジを使用するかもしれないことなどが発表された。しかし一部では過去5年のパフォーマンスはS&Pを下回っており、3000億ドルという規模に見合う意味のあるリターンを見つけるは難しいという声もあがっている。

**新たな局面に入るスイス

移民を制限する法案はスイスとEUの関係を難しいものにさせる。スイスはEUの外にありながらEUと経済関係を結んでいるが、それはいくつかの基準を両者で満たしていることが前提であり、移民の制限はこれに抵触する。スイスの輸出のうち56%はEU向けである。このようなナショナリズムとEUとの関係はスイスのみならず他の国にも多く見られる。