2013/08/02

社長がめったに語らない話 仮説検証(アブダクション)は精神的に楽


モデリングが優れている点は、変化や失敗に柔軟に対応できることだけでなく、このモデルの再構成が心理的な負担なく容易に行えることである。

ジュンク堂池袋店の数学コーナーでプッシュされていた本です。amazonでレビューがついていませんし、読書メーターでも登録しているのが5人という非常にマイナーな本ですがとても面白いです。書店員さん恐るべし。

内容は数学家出身らしく数学や論理を用いて科学技術と倫理、詭弁の論理学、政治などを記述していくというもの。どの章も面白いのですが、その中でも本書で筆者が一番傾注して書いていること、つまり著者が採用している実世界モデルが良くまとまっているので紹介します。

論理で使われる推論にはディダクション(演繹)、インダクション(帰納)、アブダクション(仮説検証)があるとしてそれぞれについて説明しています。少し長くなりますが大事なことなので引用します。


・ディダクション

演繹と訳される。仮定から次のステップの結論に前向きに進むことである。この場合、仮定(前提)が確かなこと、あるいは確かだと信じられることが望ましい。


・インダクション

帰納と訳される。次のステップの結論(より一般的真理)を得るために、基準となる前提 - すなわち事実、あるいは確かなこと、信じられること - まで後ろ向きに戻り、それを確認、納得、あるいは確信したら、今度は前向きに進んで、現実を評価し次の予測やより一般的真理を得る。

欠点は、前例や類似例が少なかったり、例外が必ずあることである。またその前提自体が常に真であるか検証できないことが大いにあり得ることだ。さらには、事例、事実の解釈が人それぞれであることである。


・アブダクション

これは仮説検証と訳される。実世界のモデルを作り、それに基づいて逆に実世界での事象・出来事を解釈し、解釈値を実世界と照合、検証する。そしてもし整合していなければ、さらに再びモデルを作り、ということを繰り返すことである。

当然ディダクションやインダクションを包含しているのだが、モデルを陽に意識し、変化の機構を持っていることがエッセンシャルなのだ。

アブダクションのベースには、人が作るアーティファクト(抽象物を含む)に完全なものはあり得ず、いつまでも未完成だという考え方がある。

私たちは世界のモデル作りを無意識に行っている。そして世界を見る・認識するとは、そのモデルの解釈することであった。アブダクションはこれを明示的に意識するのである。意識的にモデルを作成し、それを操作、動作させ、その振る舞いや結果を見るのである。

モデリングを意識化することで、自分のモデルをメタの立場で自然に診ることになり、解釈のみならずモデル自体が変化するのは当然のことと理解でき、自身の考え、解釈に固執する必要がなくなる。

インダクションでも実際はモデルを解釈しているのだが、モデルが変化することを明示的に意識していない。

モデルなら変えることに心理的抵抗はないが、この場合自分のモデルに固執し、結果としてかなり不幸な副作用を起こす。

それに反しモデリングが優れている点は、変化や失敗に柔軟に対応できることだけでなく、このモデルの再構成が心理的な負担なく容易に行えることである。

モデルが間違ったのは自分がお馬鹿なのではなく(可能性は排除できないが)、新データを知らなかっただけで、モデリングの途中だ、と気楽にやれる。


どうでしょうか。仮説検証という言葉は誰しも聞いたことがあると思いますが、普段から実際に実行しているでしょうか。

この世界観を持つと現実を自分が現在採用しているモデルを通して世界を把握していると明確に意識できるので、上手くいかない場合にはその採用しているモデルを疑い変更して現実で試せば良いだけになるのでなにかと楽です。

要は間違っていたのは自分ではなく、採用してたモデルということですね。環境の変化にも適応できますし、難しい問題があったとしても試せばいいので必要以上に考える必要がなくなるのも良い面です。

数学で記述されているますが、表しているのは実践的なので現実世界に興味があるなら一読してみるのも良いかと思います。


**FRBは現状維持

FRBが経済の状況をmodestに変更した一方で、米国GDPの第二四半期は年換算で1.7%と強い成長となった。縮小時期に関しては言及はなく市場に配慮した格好となっている。

**Spotify、コストも急上昇

スイスのデジタルミュージック配信のSpotifyは現在30億ドルの価値があり、これは2012年の倍となっている。売上が2011年の1億9000ユーロから2012年には4億3470億ユーロと増加する一方で、営業赤字も2011年の4500万ユーロから5800万ユーロと拡大している。

**Facebook株がIPO価格まで戻す

先週の発表以来40%の上昇を示しており、37.96ドルのIPO価格を上回る取引をされている。Facebook株は上場して数日以後はこのIPO価格を下回る動きをしていた。160億ドルの売上のうち41%はモバイル広告からなる。

**日経平均は337円高の14005円

イベントを控えて乱高下しだすのは米国市場ではここ数年良くみられる傾向で、日本市場にも海外資金が入ってきたことにより動きが似てきたことの証左であると考えられる。日本では新興市場がガンホーにつられて一時ガラ相場に。S&Pは1700ドルを超え最高値を更新。