「ああ、あなたがたは、目のつけどころが低い。もっと上を見よ。もっと高いところを。」
目には、空に秀づる富岳も見えず、その下の方に、青から緑にうす霞んでいく山々も、湾内に群がる船舶のかげも、そのほか、近代日本を形づくるいっさいの物という物が、なにもかも見えなくなってしまった。ただ、古い日本だけが、かれの眼底にありありと見えていた。
小泉八雲を読む機会があり岩波文庫であったので本書を選択。彼の日本人とその考え方について論じている箇所があったのでそれをまとめてみました。
1.小泉八雲いついて
2.仏教について
3.死者について
1.小泉八雲について
著者のラフカディ・ハーンは1850年にイギリス領レフガタ島(後にギリシアに編入)で生まれる。父はアイルランド人でプロテスタント。幼少をダブリンで過ごすが、大叔母の厳格なカトリック教育に嫌気が差す。
1890年に日本に米国の通信員として来日するもこれを破棄し、日本で英語教師となる。松江、熊本、神戸、東京で教鞭をとる。1896年に日本に帰化。小泉は妻、節子の姓、八雲は出雲を愛したことに由来する。
日本文化に関する著述で有名。本書も13冊目の著書になる。
2.仏教について
東洋と西洋で根本的に違っている概念は『前世の概念』だ。日本において『あきらめ』『前の世』といった言葉は、西洋人の『正しい』『間違っている』が始終出てくるように、日常の会話に出てくる。
西洋は自我を人格や個性などといった哲学的観念で捕らえる。しかし日本や仏教では自我が単一なものだと考えるのは、うぬぼれの絵空事と考える。真の自己とは『無我の大我』であり、各人のなかにある仏性だとしている。
『我』は色々なものの集合体であり、自己はほんのつかの間のまぼろしが寄り集まっているのである。それを作るのが業である。業は因果であり、同一の合成体が生き残っていることを意味するのではなく、性向だけが生き残っているのを意味する。そして新しく作られた個体は、必ずしも人間の形を取るとは限らない。
3.死者について
生きているものの世界は、死せるものの世界によって直接支配を受ける。死んだものも同じようにこの世に現存するのだ。このように日本人は考える。だから日本人は死者に呼びかけることや、死者に対するつとめを欠かさないし、過去に対する同胞についても忠実に感謝する。西洋では過去の人については業績や思想にのみ多く傾倒し、死者は神の審判によって他所に移されたものと考える。
また神道におけるわるい神は、単に死者の霊に過ぎない。したがって戦うのではなく、これをなだめる。絶対のまじりけのない悪、という概念は存在しない。いろいろな性質で人間の良い性質と悪い性質を持っていると考える。
初恋は、死者の情熱と美とが復活して、心を惑わせ、いつわり、迷わせ、たらかしこむ。しかし婦人の真の美しさはそういった幻想がすっかり消えたあとに現れる。それは死して土に埋められた、幾百万の心臓のもっていた愛情であり、信義であり、無視無欲であり直覚である。そういったものが蘇ってくるのだ。
感想
東洋と西洋の違いについて色々言及してあって楽しく読めました。その中で特になるほどと思ったのが日本家屋についてのくだりです。
日本の建物は建て直しを前提としているので粗末である。だから街は数十年でまたその姿を変える。つまり変化を前提とした建築となっていると。
そういう視点から近年の郊外の画一化やシャッター街を見てみると、それもまた永遠に固定されたものではなく今回はたまたまそういうターンだったという見方ができそうです。
ヨーロッパのような中世の香りが残っているような都市をとかく理想視しがちですが、日本では数十年おきに街に変化するのが要諦だと思えば、現在の状況もそれほど悲観視することもないのかもしれません。
また本書には3つの短編も同時に収められていました。どれも女性が主人公で
子供を失ったが尼になったあと多くの子供に慕われたおとよ。
良家の娘で躾をしっかり受け、夫の不貞に耐え感情を押し殺したが、最期に一言放って死んだハル。
母と妹のために芸者になり、良いところの青年に見初められたが、その生い立ちゆえに結婚せずに尼になったきみ子。
と、どれもどことなくうっすらとした寂寥感が差している感じがとても良く、琴線に触れる作品でした。
**NASDAQ、取引を一時中断
AppleやGoogle、MIcrosoftなどが上場されているNASDAQが技術上の問題により12時14分に中断した。2時間して回復しだしたが、出来高は少なかった。NASDAQはFacebookの上場に続いてのトラブルとなる。また前日にGoldman Suchsもトレーディングシステムが故障している。NASDAQに上場されている2700社は6兆ドルの時価総額をのぼる。
**減少するエマージング諸国の外貨準備高
中央銀行の外貨準備高は混乱に対する緩衝材となる。今回の混乱で中国を除くエマージング諸国は5月以降に810億ドルの外貨準備高が現象した。国別では、インドネシアが-13.6%、トルコが-12.7%、ウクライナが-10%、インドが-5.5%の減少となっている。為替防衛はすぐに難しくなるので、資金流出を断固とした考えで止めなくてはならないと考えるアナリストもいる。
**安定しているロシアルーブル
ロシアは今回のエマージングマーケットの混乱には巻き込まれていない。その理由として挙げられているのは、財政黒字、高止まりする原油価格、世界で三番目のハードカレンシーの保有国などである。ロシアの中央銀行は外貨建ての資産の不均衡を避けるように動いている。