2014/08/30

FTとか相場観とか 20140830

**Natoがウクライナにロシア兵が侵入したと警告

Natoはウクライナで1000人以上のロシア兵が作成行動中であると発表し、Natoの危機作戦センター長のNico Takはロシアは対空システム、弾薬、戦車、兵員輸送車を東ウクライナに輸送したと発言した。Natoはこれらを衛星写真から得たとしている。同氏はまたロシアは国境に2万人を越える兵士を集結させているとした。ロシアの戦略目標はこの紛争を凍結させ、停戦に持ち込むことにあるようだ。

**東証 ディスクロージャー基準を引き締めへ

FT紙が報じていたNikkei Previewsの妥当性について東証が反応した格好にある。Nikkei previewsは決算前に数字が掲載されていたが、それらは明らかに企業の担当者から得たものであり公正さを問われていた。

**スウェーデンの学校教育に疑問符

かつて世界で範とされたスウェーデンの教育システムだが、OECDの学力ランキングで顕著な下落(特に数学と科学)を示しておりその効果に疑問符が投げかけられている。スウェーデンでは学校教育における民間企業の割合が高いが(小学校で5割、高校で8割)、中間所得層の親はこういった学校を避けるようになっている。一方で低所得層はパフォーマンスの悪い昔ながらの学校に通っている。

**LagardeIMF専務理事が捜査対象に

2007年のSarkozy氏の選挙で支持に回ったビジネスマンのBernard Tapie氏の調停プロセスに関与したのではないかという疑い。Lagarde氏は関与を否定し、現在の職に留まる姿勢であり、同理事会もそれを支持している。前IMF専務理事はセックススキャンダルで辞職に追い込まれている。

**20世紀とは違うスタートアップ環境

現代のスタートアップ企業は以前とは違う。歴史的な低金利とデジタル革命によって、安く、速く、簡単にアイデアを試せるようになり、何が成功し何が失敗するかを発見するのが簡単になった。実際失敗に対する姿勢も大きく変わった。ちゃんとした倒産なら以前より速く許されるようになった。特にテクノロジーセクターは知的財産にプレミア価格が乗せられて買収されるようになっている。

これを受け手イギリスでは自営業者の割合が1975年の8.7%から15%へ増加している。

一方でグローバリゼーションは競争激化を意味している。また政府による規制、保険、税金といったコストは増え、GoogleやAmazonといった独占という環境下にもあるのもまた事実である。

しかしながら3/4の自営業者は現在の生活が良いと考えている。自分の運命をコントロールできる満足は何にも増して価値があるからだ。

**中国不動産で大幅な値引き

低調な不動産市況を反映して不動産価格を大幅な値引きをして在庫を減らそうとする動きが広まっている。AlibabaのTaobaoでは最大で325000ドルの値引きが見られた。値引きは去年から見られているがこれまでのところその取引量を回復するには至っていない。

**Wickrがチャットサービスに名乗り

サンフランシスコベースのサイバーセキュリティのスタートアップ企業Wickrが金融機関間で使用するチャットサービスの導入を金融機関と交渉している。サービスはP2Pで行われるのでWickrが監視することもできなく、またメッセージも自動的に消去される仕組みになっているという。これにより規制当局が情報を求めることができなくなる。この分野では長年にわたりBloombergのものが使用されていた。

**3本の矢と6つの障害

アベノミクスが息切れしている6つの要因が紹介されている。消費税増税、物価高と上昇しない賃金、円安、円安にも関わらず伸びない輸出、停滞する設備投資、インフレ率2%への道のり、などといった具合である。

**Hollande首相 左派を更迭

Holland首相はEU緊縮財政に反対したArnaud Montebourg経済大臣を更迭した。大臣は緊縮財政を馬鹿げた政策だとし、1929年以来もっとも破壊的な危機であると発言していた。フランスの上半期の成長率は0であり、失業率は引き続き高くなっている事が背景にある。この経済停滞により左派は人気を失っており、首相の支持率は17%に過ぎない。

**市場の次の危機はサイバー攻撃

International Organisation of Securities Comissions(Iosco)は次のブラックスワンはサイバー空間からもたらされるだろうと警告し、世界中でサイバー攻撃に対するより一層の注意と努力が必要だとした。規制当局は来年を目処にどの機関が適切にサイバーリスクを管理しているかを測るツールを導入する予定している。。

**米国のゴルフ人気に翳り

米国では12人に1人がゴルフをプレイをし、同国で最もプレイ人口が多く売上も大きい。これに加えて高齢化と平均寿命の延びにより業界は安泰だと思われていた。しかしここにきてプレイ人口は去年と比較し-4.9%減少し、2014年の上半期売上も-3.5%減少の14億ドルとなった。特にドライバーなどのウッド関係の供給過剰などが問題となっている。

**米国の人種問題

黒人のMichael Brownは武装していなかったにも関わらず白人警官によって射殺され暴動が起きた。この一連の流れはアメリカにおいて黒人の少年をどう扱うかという長年に渡る議論を再燃させている。

**Fedは雇用についてよりニュートラルな見解へ

Yelln議長の初ジャクソンホールは雇用環境に対するテクニカルな話に終始し、金融政策にはほとんど触れなかった。講演では労働市場は構造改革の余地があるとし、早過ぎる利上げの危険性を指摘した。

**冷えるキエフ-ロシア関係

ウクライナはロシアの東ウクライナに対する人道支援コンボイが政府の許可を取っていないとしてこれを非難した。これに対してロシアは我慢の限界に達し、250に及ぶコンボイの邪魔する試みに対して警告を与えた。NATOはロシアの人道支援をウクライナ政府の許可を取っていないとして非難している。

**ドラギ総裁 財政ルール緩和トーンへ

低調な雇用と低インフレに対する懸念がますます高まっているとして、GDPの3%の赤字しか認めない財政ルールの緩和を示唆した。

**GPIF改革

127兆円を誇る年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)のトップの給与は1720万円だが、これは世界の民間最大のBlackRockのLarry Finkの1/140でしかなく、GPIFの保守性を示している。スタッフの数は76人である。

しかしGPIFも改革が行われ、今後数ヶ月のうちに新しいポートフォリオ戦略を採用する。仮に現在の国内株式比率16%から20%へと引上げられれば、日本株市場に5兆円が流入することになる。

**Bank of America 167億ドルの和解金に合意

住宅ローン販売で投資家をミスリードしたとして、米司法省と合意した。この和解金は過去最大の支払いとなる。96億ドルは現金で、70億ドルは消費者救済に充てられる。

**EUも日本型の失われた10年か

Stiglitz教授はヨーロッパも日本と同じ道を辿っているのか、という質問に対してそうだと答え、ヨーロッパで起こっていることを描写するたった一つの方法は景気後退であるとした。GDPは第二四半期には停滞し、インフレ率も4年ぶりに0.4%と低い水準にある。低インフレ率と低成長は別のリスクをもたらす。

**イランの水事情

イランの年間降水量は過去40年の間に-16%減少し、前農水大臣はその状況を指して水不足は核やイスラエルや米国の脅威よりも大きいとした。水の確保についてもアフガニスタンやイラクと競合する関係になっている。

■相場観

今週もまったく代わり映えしない相場であった。木曜日にロシア軍がウクライナに侵攻というニュースがあり、すわ騒然となりそうであったが結局は戻し、金曜日には再び高値を取って来ている。

FTを読んでいても紙面からは諦めの雰囲気が漂って来ている。地政学リスクはあるのに相場は反応しないとなれば紙面を賑やかすのも難しい。異常な低金利 (異常な債券高)や緩んだファンディングなど色々あるが、どれもこれも既に過去の紙上でやってきたことの繰り返しになっている。

どこかでこの相場も崩れる。しかしそれが今年中なのか10年後なのか我々の死後なのか解らないのが相場というものである。我々に出来るのはいつか来るはずの津波に備えて用意をしておくことだろう。たとえ狼少年といわれようとも。