**中国富裕層を取り込む困難に直面したEU諸国
ポルトガルは2012年以来1360ののビザを出したがそのうちの81%は中国人向けのものだ。50万ユーロの不動産投資を行い5年居住をすれば永久居住者の資格を得ることができる。
このような動きはマルタやキプロス、スペインなどでも行われる一方、中国人にとっては本国でなにかが起こった場合の脱出ルートとして考えている。こういった国籍をお金と代える行為に対してEUの価値と安全保障を傷つけるという批判も当然ながら出ている。
**Moody'sがロシア企業のクレジットクランチを警告
西側の制裁によりロシア企業はグローバルな資本市場へのアクセスを失っている。
その結果2015年は問題はないが、2016年や2017年は資金の借り換えが上手くいかなくなる可能性があり、その影響は大企業に比べてレバレッジ比率の高い中小企業により大きく出ると予想されている。
**中国の投資は先進国へも
中国のEUに対する投資額は2010年に61億ドルであったが、2012年には270億ドルと4倍になりこの動きは今後も続くと予想されている。
この背景には資源のあるアフリカ諸国への投資からEUを含む先進国へと投資先が構造的に変化していることに起因するようだ。
投資は78%が中国の国有企業によるものだが、民間企業もM&Aで2011年から2013年にかけて30%を超すようになりその前の3年間の4%から大きくなっている。
**ユーロ・ディズニー支援へ
1992年以来苦戦の続くパリにあるディズニーランドに対し、40%の株式を握る米本社が10億ドルの支援を行う。
内訳は4億2000ユーロの資本注入と6億ユーロの負債の株式化である。
これによりユーロ・ディズニーは1億7500億ユーロの負債を1億ユーロへと減らすとともに、2億5000ユーロの資金と得ることになる。
**Gross退任による影響
Bill Grossの退任によりPimcoのTotal Return Fundsは235億ドルの解約があり、この影響はeurodollar市場にも出た。
**意図的なネットワーキングはキャリア促進を妨げる
MBAにとってネットワーキングは最も大事な部分で生涯を通じて行われるものだが、友人を作るより自らの利益を優先させるネットワーキングは効果的ではないのが調査により明らかになった。
意図的なものは自らを正当化させるのが難しく精神を汚す。その結果としてぎこちなくなり、ネットワーキングそのものにも支障を来たすようになる。
**FX業界におけるアルゴリズム
5年前まではアルゴリズムを持っていなくても問題なかったが、現在ではアルゴリズムを持っていないと負けてしまう。
アルゴリズムは注文を小さくすることにより市場へのインパクトを減らしまた匿名性を保つ。
投資銀行はアルゴリズムを提供する販売会社にる一方で、バイサイドはA社のアルゴリズムからB社のアルゴリズムへと乗り換えるのが簡単になったため従来のようなロイヤリティはなくなっている。
アルゴリズムを用いる際のリスクとしては、アルゴリズムの判断に対して人間が正しく判断できなくなること。アルゴリズムは互いに流動性を求めているので競争が激しくなり結局のところ人間が判断しなくてはいけない局面が出てくることなどである。
**NYとロンドンの比較
今年のIPOの調達額は全世界で1860億ドルであったが、そのうちの41%はNYに対し、ロンドンは14%の250億ドルになる。
一方で為替やOTC取引では全体の41%~49%をロンドンが占めるのに対し、NYは19%~23%である。
ロンドンはアジアやエマージングマーケットを対象とする場合、時間の都合上競争力が高まる。
金融セクターの労働者数はNYの44万人に対してロンドンで36万人で、平均ボーナス額はNYが164500ドル、ロンドンが96500ドルとなる。
億万長者の数はNYが103人、ロンドンが72人になる。ちなみにこの数はモスクワでは85人、香港で82人となっている。
1人あたりの生活費はロンドンでは12万ドル、NYでは10.7万ドル。高級ホテルのレートはロンドンでは1泊あたり450ドル、NYでは400ドルである。
NYとロンドンの両方で100日以上働く人の談によると、NYの通勤時間の長さや始業時間の早さはフラストレーションになり、ロンドンは貧弱な空港設備やEU内での不確定な地位があるとするが、総じて両都市とも文化的なオファーが多く素晴しいとしている。
■10月のマーク・ファーバー
最低賃金の話や生活保護の話をしている。自身の例をあげて戦後すぐの世代はすぐに働かなくてはいけないケースが多く、低スキルは低賃金に甘んじる必要があったのでがんばって技術やスキルをつけた。
しかし今の政府は寛大なため低所得層に簡単にお金を配ってしまい、その結果スキルを上げることのインセンティブを失わせていることになっている。これは政府にとって投票行動を操作しやすくし、奴隷にさせている。
ニューケイジアンとされるPaul Krugman , Larry Summers, Martin Wolf, Thomas Pikettyは政府の役割増大を求め富裕層に高い税金をかけることを求めるが、既に政府は失敗してきているのでまた違った間違いを犯せさせようとするのだろうか。
10年債は今後数年も低位安定するだろうが、ハイイールド債はわからない。ユーロのセンチメントは既に最悪であり今後もドルが続伸するかもしれないが、積極的にはいかない。金は既にショートポジションが積み上がっており反発する可能性がある。
■相場観
ようやく相場が下げ相場入りしそうになってきた。この動きがどの程度まで進むかは解らないが、もし本格的な下げとなると2009年から実に5年ぶりとなる。長い。
個人的には売りのタイミングが2週間ほど早かったみたいでなんだかなぁという感じだがまあ仕方ない。
それはともかく次に金融危機が起こった際は雇用が本当に大変になるのではないかと予想している。
1つは前回のように中央銀行が力ずくで上げる方法を取れないことがあるが、もう一つの理由としては機械が人間にとって代わること。生産性上昇のためにいらない人員をきっちり整理することが進むだろうと予見されることだ。
この5年で格差の問題や雇用の回復の遅れが議論の中心を占めてきたが、これでさえ中央銀行の浮揚策があってもの話である。もしこれが無かったらと考えると、この5年でこれまで以上にIT化が進んでいる事実を勘案すると次は本当に大変なのではないかと考える。
ちょっと長くなるがFTにも下記のような記事があったので載せておく。
**中産階級の危機
先進国の中産階級の実質賃金は低下し続け生活を圧迫している。この事象に対しFT紙は6人の識者へインタビューを行っている。共通するのは特効薬はないという事実だ。
・Stiglitz ノーベル経済学賞受賞
米国の労働者生産性は40年でおおまかに言って2倍になっているが、実質賃金は停滞している。理由としては弱い労働組合の低下と非対称なグローバリゼーションが挙げられる。税制を投資優遇から労働者優遇へとインセンティブを変える必要がある。
・山田昌弘 社会学者
日本では中年男性の雇用は守られたが、新卒や女性は不安定化した。また政策は高齢者優遇を行った。その結果、若年年齢層の収入の低下と少子化が進行した。
これにより2つの影響が生じた。1つ目は生活水準を維持する方策として相対的に豊かな親と同居が取られた未婚化が進んだこと。しかしこれは少子化をまねき、高齢化を促す悪い循環になった。
2つ目はゲームやアニメといったバーチャルな世界に逃避する動きが強まった。
高齢者優遇の政策を見直し、富裕層、特に高齢者に対する課税を強化すべき。また結婚の後や子育てに入った世代の生活水準を保つ必要がある。同様に、女性の社会進出を促進し、若者の不公平な雇用慣行を訂正する必要がある。
・Branko Milanovic NY大学客員教授
教育が大事だと考える3つの理由がある。
1つ目は歴史的にみて米国、日本、韓国、シンガポールといった国は経済的に反映したこと。
2つ目はOECD諸国では初めて子供達が親の教育レベルに達していないことが明らかにあったこと。
3つ目は先進国諸国で低教育層が増えており、これは単純に韓国に劣るが、さらに言えばタイにも賃金/スキルレシオでみると劣ることになる。
恒久的なアンダークラスを作るのを避けるには教育の上昇性が確保されている必要がある。
・Deirdr N McCloskey イリノイ大学教授
問題とすべきは労働者階級の絶対的な条件だ。OECD諸国のそれが受け取る商品やサービスの数字は1800年に比べると30%、100%、2900%、9900%といった数字がどこの分野にも見られる。
OECD諸国の病気は政府の規制につぐ規制から来ている。自由化を規制することによって貧困階級や中産階級の生活が向上するなどといったことは夢物語だ。最低賃金、雇用の保護、銀行に対するサポートといったものは諦めるべきだ。
・Bart Van Ark and Gad Levanon NPOシンクタンク
政府は仕事が無い事ではなく、労働者不足に焦点をあてるべきだ。先進国の労働参加率の減少が顕著に起きており、将来的に労働者不足に悩まされる。これは想像以上に早い段階来る。特に輸送、建設、鉱業、医療といった分野だ。政策立案者は雇用市場の流動化を目指すべきだ。
・Guy Standing ロンドン大学経済学教授
ベーシックインカムの導入がいい。ばかげた様々な補助金の代わりとなるし、運営コストも安くて済む。形は一括払いではなく毎月払いがいい。
1980年以来のグローバリゼーションとテクノロジーの進展によって我々の実質賃金は低下したり、上下するようになりまた雇用も不安定化した。現在の社会保障はこれらに対応できていない。ベーシックインカムのみが安全を提供できる。
ベーシックインカムへの主な反論は人々が何も産みださず、また労働者が減るというものだが、インドやアフリカ、カナダといった所でおこなったパイロットケースでは人々はより働き生産性もあがりより協調するとが示されている。