2013/08/31

不思議な国のクラシック 鈴木敦史


クラシック講座の課題本とはいいつつも、日本においてクラシックを聞くという絶望的な状況から、逆に日本人論に展開するというちょっと変わった本。

かしこまるところがなく、エロとオレ様という概念で作曲家や演奏、歴史を押し切っていくのは素晴しい。


1.エロとオレ様

クラシックにおける『エロ』とは音楽の構成およびハーモニーから来る快感、『オレ様』とは表現意欲と進歩主義的な世界観をそれぞれ意味している。

日本人に向いているクラシックは暑苦しくないクラシック。それには二つのパターンがある。それは『エロでオレ様』度が弱い演奏か『エロでオレ様』度が弱い作品だ。

現代ではこういったカロリーオフな演奏が主力商品であり7割はこれだ。そしてこれは海外についても同様の傾向がみられる。


2.エロとオレ様からみるクラシックの歴史

・中世

クラシック以前の音楽。中身はヨーロッパの民族音楽

・ルネサンス

ハーモニーが前面に押し出される。この時代はエロだけでオレ様はほとんど登場しない。

・バロック

オレ様が台頭するがエロも新たな局面を迎える。

・古典派

再びエロがオレ様を凌駕した時代。ただし、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンはオレ様を個性的に表現したから後世に名を残した。

・ロマン派

ベートーヴェンのオレ様が膨張拡大し、『エロなオレ様』が完成

・現代

『エロなオレ様』も飽きた。エロでもなくオレ様でもない音楽を目指そうと悪戦苦闘。

3.七種のクラシック人間

日本人がクラシックを楽しむ場合どんな類型があるかを列挙している。

・全身クラシック人間

人体改造をしてヨーロッパ人になる

・全身クラシック中毒

1年365日24時間クラシックを聴く

・上半身クラシック人間

音楽に音楽以外の意味付けをする。ステータスとして愛好。演奏家の経歴を聴く方が重要。音楽を聴いている私が素晴しい、という自分自身がエロなオレ様という線も。日本のクラシック音楽をがっちり支える層。

・下半身クラシック人間

音楽は役に立つものではなくてはならない。音楽は実用だ。頭の回転数がよくなるなど。

・左脳クラシック人間

分析。楽譜。クラシックは精巧な音楽。

・右脳クラシック人間

自分の体質に合う音楽だけを聴いたり、体質にあった音楽に料理してしまう。芸を楽しむ。

・分裂クラシック人間

クラシックという合理的な食べ物を味わうために、身の回りの不合理な事を不合理として楽しむ。常に優位にあるのは音楽であり、生活ではない。生活など定型的な感情しかもたらさない、ちっぽけなもの。

4.感想

日本におけるクラシック批評の歴史があったが、ひたすら揶揄していく格好は読んでいてちょっと疲れてしまった。批評に関しての批評という構図もあまり生産的ではないかもしれない。もちろん生産的という言葉を使うと揶揄する言葉が投げかけられるのだろうけど。

先日長らく眠っていたThe art of Violinという過去のヴァイオリニストを現在のヴァイオリニストが解説をするというDVDがあったのだが、対象を評している点という意味では同じだが拠って立つもの違いが明確にあり、とても面白かった。

もちろん技術的な部分は解らない。でもそれをへんてこに歪曲して解ったつもりになるよりも、良いのではないかと思う。この違いが一時万事なのではないかとはずっと思っている。

って書いていて思ったがそうなると、批評家が批評について独自の視点から批評するのは良いのかもしれない。


**Vodafone、Verizon Wireless株を売却へ

Vodafoneが所有している45%の株式をVerizonへ1300億ドルで売却する見通し。これは過去3番目のM&Aになる。通信業界は低成長、低金利、価格競争などの要因などによりM&Aが活発に行われている。

close in 迫る
stand-off 行き詰る

**ブラジルの農業ブーム

過去10年に渡ってブラジルは農業大国として台頭している。砂糖、コーヒー、オレンジジュースを支配し、大豆でも米国と競争を始めている。新型の種子は農業生産のサイクルを早めるものもあり、年に3回も収穫を行えるものもある。

impetus 推進力

**ヘッジファンドの移譲について

過去30年に渡って投資家はヘッジファンドの名前に対して投資をしてきた。しかしその名前達も続々と引退しだしており、それに伴い資金を引き上げている。その名前はジョージ・ソロスであったり、スタンレー・ドッケンミラー、ジュリアン・ロバートソンなどだ。ヘッジファンドは2.3兆ドルを擁し、銀行のように規制をされていない。3番目のアセットクラスとなったいまその存続を行うべく後継育成に投資をするべきだろう。

handover 譲渡