2013/09/01

海戦からみた太平洋戦争 戸高一成 戦略目的は一致させなければならない


著者は呉市海軍歴史科学館館長で『海戦からみた日清戦争』『海戦からみた日露戦争』などを執筆。今回太平洋戦争を扱っている。

体系的というよりは色々な事実を網羅している感じの本であり、読んでいる時は良いがまとめるとなると結構難しい。今回は次のような切り口からまとめてみた。

1.真珠湾における作戦目的の不徹底

2.ミッドウェイ作戦における軍令部と連合艦隊の目的の不一致

3.古賀と福留

4.考えてみる

なおまとめには入れていないが、第4章は特攻が実施されるまで、また酸素魚雷の功罪や大和の設計思想などといった点も触れられているのでそちらも興味深かった。



1.真珠湾作戦の目的の不一致、不徹底

南雲中将が重油タンクや工廠を目標とした第二撃を行わなかった事は、米海軍の早期立ち直りを可能にしたとして後世から良く批判されている。

しかし背景には空母の温存を第一にする軍令部の目的と、犠牲を顧みずに真珠湾を徹底的に破壊し敵の闘争を根本を萎えさせ早期講和に持ち込むという山本の目的(戦艦を狙ったのは海軍力の象徴だった)のズレがあった。そして山本長官はその意見を徹底させる努力をしていなかった。

説得しなかったエピソードとして次のようなものがある。

真珠湾作戦が成功裏に進みつつある時に機動部隊の中では第二撃を行うか議論がされた。大勢としては行う方に傾いていたが、航空参謀の佐々木は敵空母の位置が傍にいるが位置が掴めなく、このまま留まると空母を失うとして反対した。

しかし戦後、書簡『戦備に関する意見』を読み山本の意図を初めて知り、どんなに損害でても反復攻撃をさせるのであったと後悔している。直属の部下にさえ意図を知らせていなかったエピソードである。


2.ミッドウェイ作戦における軍令部と連合艦隊の目的の不一致

開戦時の海軍は第一段作戦として、東洋から敵勢力の駆逐と南方資源の獲得を、第二段作戦として戦略持久の用意と米艦隊主力の撃滅を構想していた。

しかし真珠湾の成果により、戦域を拡大した第二段作戦を構想することになった。そしてここに軍令部と連合艦隊の目的が分裂があった。

軍令部は連合軍の本格反攻が1943年以降と考え、フィジー・サモア(FS作戦)を攻略することによりオーストラリアの無力化を考えた。

それに反し連合艦隊は、ミッドウェーを攻略し、のちにハワイを占領することを企図した。

したがってミッドウェー作戦はそれぞれ次のような思惑をかかえることになった。

軍令部はミッドウェー作戦をFS作戦の前段階として考えた。そして敵空母の撃滅することには同意をしたがハワイ占領に同意をした訳ではなかった。

一方の連合艦隊はミッドウェーを攻略し哨戒能力を得ることによって本土空襲を防ぎ(米空母から陸軍爆撃撃を飛ばされ本土空襲され面目を潰された)、ハワイ攻略の足場とする考えであった。

なおガダルカナル飛行場はFS作戦の一環であったが、ミッドウェイで敗北したことによりFS作戦は中止されていた。したがって建設する必要ない場所に既になっていたが、連合艦隊も現地艦隊も漠然と建設作業を継続していった。

3.古賀と福留

連合艦隊司令長官が前線で指導するのは、状況がめまぐるしく変わる近代航空戦には不向きであった。山本もニミッツがハワイで指導するのに対し、自らがラバウルに行くのに不満を漏らしていた。それでも現地に赴いた小沢が草鹿の後任で思うようにできない部分があり、直々の指揮を求められたからである。

43年4月に山本が撃墜されたあと連合艦隊司令長官になったのは古賀峯一であり、その参謀長は福留繁であった。この二人は大鑑巨砲主義であり、艦隊決戦主義者であった。44年4月に古賀は遭難し行方不明、福留は救出されるがZ作戦の計画書を紛失した。これは『乙事件』と称される。

結局この二人は、中央の意向にも関わらず防衛線をマリアナにに引くということはなく、ソロモン戦線の維持に固執し航空戦力を消耗することになった。また艦隊決戦の幻影を求めては連合軍に翻弄される格好となった。

4.考えてみる

山本が真珠湾作戦を成功させたことによりミッドウェー作戦も引き続き、採用されないなら辞める、という恫喝を加えることによって指揮系統を引きずっていく。

本来ならこういったわがままに関してはどんなに優秀な人物であっても、ではお引取り願おうとしなくてはいけない場面ではないだろうか。もちろん人望も実績もある人物をそのように追いやるという役割は決して愉快ではないし、大多数には理解されない行動だ。

しかしだからこそそういうのが見える立場の者の責務としてそれを行う必要があったのではないか。

ミッドウェー攻略作戦もその図上演習上でリスクの高いことが解った以上は、体を張ってとめる必要があっただろう。近藤信竹が抗議がしたようだが、結果論としてはもっと強くやる必要があった。しかし筋としての責任は真珠湾同様に山本にやらせてみようという永野にあるのかもしれない。

リーダーシップが上手くいかない場合に流れる不穏な空気の時に、しょうがないな、で手を挙げられる人物をどれだけ抱えられるかによって組織の強さを測ることができるかもしれない。


**米、シリアでは1400人が殺害

ケリー国務長官が発表。演説ではトルコをはじめとするアラブの大多数、ならびに最も古い同盟者であるフランスのサポートを歓迎するとした。一方で爆撃を否決したイギリスについては言及しなかった。米国は国連を尊重はするが、査察の報告を待つ必要は無いとしている。また化学兵器がいつどこから運び込まれたかについて知っているととも発言した。

secretary of state 国務長官

**taperingはドミノ現象を引き起こすのか

多数のエコノミスト、ストラテジストの見解が紹介されている。VIX指数を見ればこれからボラティリティは拡大するという考え方、急激に縮小を行えば混乱になるがゆっくり行えば投資家のポートフォリオ調整は大損を出さずに移行する、あるいは結局はまたエマージングマーケットに資金は戻る、Fedの縮小分は日本が補い世界的流動性は保たれるだろう、などといった予想が並べられている。

**アジア、1990年の再来になるか

インド、インドネシアの財政赤字が話題になっている。この問題は通貨を防衛するか、成長率を維持するかの選択になり、どちらを選ぶのも大変な道になる。タイでは家計の負債は2009年にはGDPの55%であったのが、現在は80%になっている。またCredit intensity、信用が1単位のGDPを作り出す指標、は2007年に比べて香港では3倍、シンガポールでは4倍にも達している。これは不動産に資金が向けられ生産的な資金の使い方になっていないことを示している。