2014/06/22

島研ノート 心の鍛え方 まとめ(1)


将棋のプロ棋士が書いた、勝負の世界に生きるとについて良くかかれている。普段垣間見ることのできない心情が吐露されており、個人的には良くここまで書いたものだと思ってしまった一冊。

負ければその原因は全て自分のせい。勝っても次の勝ちは全く保証されていない世界で、どのように勉強をしていくのか、心を整えていくのか。

若さから離れ中堅どころに入ってきた人にとっては非常に面白いのではないかと思う。

勢いだけの時期はそう長くは続かない

若者のいちばんの武器は自信だ。裏づけはそう多くてなくても差し支えないし、多いわけもない。自信は盤に向った時、勝利に必要な要素であり、若さという理由だけで技術を補い、勝てる時はいくらでもある。

しかしやがてある時期、多くの棋士が、自分の実力は上がっているはずなのに昔より勝てないのはなぜか、という悩む時期がある。それは実力があがっていないのではなく、相手の自分に対する見方が変わってきているのが実情だ。

A級棋士の凄さ

タイトルを失う不安、A級から落ちる不安は、その棋士の誇りが高ければ高いほど衝撃も大きい。勝負の世界だから格が落ちることに自尊心が耐えられるかどうかである。他のクラスとは違い、現状維持こそサクセスなのがA級の価値というものだ。

棋士ほど勝ち負けに慣れていても不安につきまとう。勝ってもいても、次は負けるのではないかという不安は誰でも消せない。降級の不安があると、手が伸びない、すなわちプレッシャーで力が出し切れないという状況になる。しかし勝負将棋でこそ実力を出し切らなければ、この世界で輝き生き残ることはできない。

A級のすごさはその技術以上に、成績の悪い側がリーグ終盤になって、力を出して星を伸ばしてくることが多い点だ。不安をいわゆる開き直り、胆力に変えていく技術をトップは持っている。

研究会

将棋は大原則として一人で学ぶこと。孤独いる時間も成長の上では大変重要だ。研究会を行っている一番の効用は、将棋に触れている安心感で、経験することをで不安を消すことが大きい。

真剣勝負の場でしか生まれない、勝負を決める執念やプレッシャーを乗り越える計り知れない力は、実戦で体験するしかない。

羽生善治の強さ

弱点はもちろんのこと長所をつかませないところに長期政権のゆえんがある。また現象面から一つ明らかなのは、不調期と呼ばれる時間が圧倒的に短い。勝負の世界では負けは避けられないが、連敗は思わぬスランプや自信喪失という致命的なことにつながるケースが少なくない。それがほかのトップ棋士より羽生は短い。

体調管理こそトップ条件で、特に冬場は大切になる。体力が勝負を決める重要なファクターであることは間違いない。公人として多くのことをこなしながら勝ち続ける羽生は、単に将棋が強いこととは別次元の段階にある。

人がある期間(例えば1年~2年)何かに打ち込むことは思いのほか、それほど難しいことではない。しかしそれが数十年となるとどうであろう。受験勉強のようなストイックさをゴールのない中で続けるのである。

■自信

勝負の世界は自信がないとやっていけない。それが真実でもある。しかし自信は生まれつきなものではなく、また一度ついてもすぐ消える性質のものであることを意識して臨むことが大切である。

上に行けば行くほど長所が目立つ棋士よりも、欠点の少ない棋士が有利になる。

得意戦法を避けた側の勝利は低いという現実的なデータもある。打ちないコースがあるというだけでプロとしては致命的な欠陥といえる。羽生たちが最先端で戦うのは、逃げ出すとずっと逃げなくてはいけないことを意識しているからである。しかし最先端では戦うからには精進と理解の裏づけが必要である。

根気強く考える体力は、棋士特有の能力かもしれない。例えばドミノを1時間かけて100個並べたとする。それを相手にいきなり全部崩される。それを平然と受け入れ、きれいにまたドミノを1から並べなおす。嫌気がささないこと、それが焦眉にいちばん必要な要素の根気である。

トーナメントで負けると対局が少なくなり、そのぶん自由時間が多くなる。それは勉強とともに、悩む時間が増えることにもつながる。

遠藤周作が就職する息子に浜辺で語った言葉

『お前はこれから、この上の歩道を生きていくんだな。それはすばらしいことだ。見通しもいい。海岸を広く睥睨することもできる』

そういって周作先生は息子より少し先をゆっくりと、しばらく歩いていった。そして息子のほうを振り返る訳ではなく、自分の歩いたところを見て言ったという。

『砂の道を歩くと疲れるな。いろいろな障害物もあり、消耗が激しい。それでも砂の道は足跡が残るな。お前はこれから上の舗装された道を行くのだろうが、堅過ぎる地面の辛さを感じる時もあるだろう。それぞれの厳しい道を歩く、人間の気持ちを忘れないことだ』

停滞期

停滞期は努力の成果が長く見えなく辛い。その時は精神論や努力の絶対量で頑張ることだけに固執せず、練習方法や考え方を見直すことも重要だ。トップ棋士は年齢になく数ヶ月ごと、定期的に練習項目や重要度を変化させている人も多い。同じようにやっているように見えても、熟達者は常に少しずつ新しいことを取り入れている。


**良いバブル

FacebookやTesla Motors、バイオテックなどの株価が上昇しているが、過去のバブルとは違って歳入としっかりとしたストーリーの裏づけがある点で異なっている。良く聞かれるのがもしGoogleのようであったら、価値はもっと高いというものだ。バリュエーションはこれらの新しい企業が、古い企業を立ち直らせなくなることを語っている。


**ドイツのジレンマ

ロシアの輸出のうち米国は3.8%だがドイツは10%であり、ロシア制裁にはドイツが最も発言力がある。その一方でドイツは天然ガスを大きくロシアに依存している。ドイツでは伝統的にロシアとの結びつきが強く、ジレンマに光があたる格好になっている。


**クリミア半島

セバストポリ港はツァーリの時代にはコンスタンティノープルを威嚇する役割を持っていた。1441年から1774年までトルコ語を話すタタール人が支配していたが、1944年にスターリンによってタタール人は国外追放されている。セバストポリ自体は80%以上がロシア語をしゃべり、また海軍を中心にロシアへの帰属意識が高いという。グルジアの例を見ればロシア編入も十分にありえる。