2013/08/13

文学部唯野教授 筒井康孝 文学批評の歴史


文学はこれからもしばらく読んでいくことになりそうなので、いったん立ち止まって過去の人がどう文学を捕らえてきたのかを復習することにしてみました。

本書も基本的には過去から現在の流れなので、文学批評の歴史を追った本ということもできると思います。やっぱり一番興味があるのは歴史ということですね。はい。取り上げられているのは下記。

・印象批評
・新批評
・ロシア・フォルマリズム
・現象学
・解釈学
・受容理論
・構造主義
・ポスト構造主義


**印象批評

いわゆる面白い、面白くない、好き、嫌いの範囲。作者がどういうつもりで書いたか、あるいは象徴という言葉で説明する批評。

印象的だったのは大江健三郎の下記の発言。

気分次第で賞めたり叱ったりする親ほど教育的でないものはないように、あいまい主義的な批評が若い作家をよく育てうるとは思いません。


**新批評

歴史や心理学、文が人類学などの社会的問題を持ち込こむ。

文学が他の学問より優れている文学至上主義に走ったり、政治化してしまったらしい。


**ロシア・フォルマリズム

文学の内容は研究せず、文学の形式、技巧を重視する批評。作家が何を言おうとしているのかを読み取ろうとするのは間違いという立場。

異化、つまり日常言語をちょっとした、あるいは徹底した文学的な技巧でもって、異常なものに変えてしまうことを目指す。


**現象学

文学作品が書かれた現実、歴史、作者、読者といった諸要素は全て無視し、作品にあらわれている作者の純粋意識にだけ注目する。つまり作家がものを体験したり認識したりするそのしかたを見つけるというのが現象学的批判。フッサール。

主観なんてものがあるとは思ってはいけない。それはただ、自然的態度でもってそれがそこにあると信じているだけのことだ。原信漂というやつだ。だからすべてをいったんカッコでくくってしまえ。判断中止しろ。そうやってすべてを純粋な現象に還元して得たものこそが純粋意識だ、先験的主観だ。


**解釈学

ハイデガーの影響。時代を意識する。

作品を了解するのは常に別のかたちの了解なのだ、その意味をずらせることだ。だからこそ、現代でほんとうの了解をえるのは、現代だけにしかない意味で作品を了解することだ。つまり新しい現代的な意味をひっさげて故郷へ変えるみたいなもの。


**受容理論

読者が文学作品を受け入れる、その役割を明らかにしようとする理論。

読者は小説の不確定箇所を社会的常識や文学的常識で推測していく。つまり図式にすぎない文学作品を読者が作品を具現化している。

内包された読者。読者がどんな性格か、いつの時代の読者か、年齢は、教養は、そんなことは一切考えない。それどころか実在するかどうかも考えない。文学作品は、読者の反応をひっぱりだそうとする性質があるので、それによって反応を引っ張り出されて文学作品を理解していくという読者モデルのこと。


**構造主義

科学の研究と同じで、その内容を分解したり分析したりできるとする。したがって、現実をカッコにいれるだけなく、それぞれの作家の意図、つまり個人個人としての人間までカッコに入れる。物語を文章のように読む。

神話は作家などという特定の人間が考え出したものではなく、すべての人間の心の中にある普遍的な構築物。つまり神話を研究するというのは、その内容を研究するのではなくて、その内容を築き上げて構造化するすべての人間の心の働きを研究する事。


**ポスト構造主義

ひとつの体系のみで語ることをしない。体系も他の体系との関係の中で語る。デリダ。

誰もがそうだと思うよな基礎のことば「神」だの「自由」だのといった自明の根拠を頼みの綱にして、そこから階層的な意味構造を作り上げようとるイデオロギーには全部「形而上学」というレッテルを貼る。二項対立を無効化する。

全部のイデオロギーを無視することは不可能だし、秩序のある考えから自分だけ抜け出そうと思ってもできない。脱構築も脱構築される。

記号論という項目があったけどここはソシュールの話だけで終わってたので省略。


**読後

こうやって手を動かすことにより、フッサール、ハイデガー、ソシュール、デリダなどのお話が少し理解できました。思わぬ副産物です。

読んでいるとそれぞれに一理あると思ったので、作品を読んだら全てを使ってみてそれぞれ結論を出していけば良いのではないかと。その中で必要であれば重み付けをあえてしてみるくらいで。ひとつの理論で全ての作品を押しきるのは難しそうだと思いました。

個人的には構造主義とロシア・フォーマリズムは良かったです。前者は要は文学作品の共通項をくくって一定の力を把握しようとする試みと理解しましたし(それが人間が持ちやすいテーマとなるならより面白い)、後者はもっと文章に近い技巧的な事、つまり技術の美を鑑賞できるようになれればなぁと(実際文章を書かないと難しいのでしょうけど)。

なんにしてもとりあえずまとめることができて良かったです。


**中国、北極海ルートを試す

国有企業のCoscoグループの所有する19000トンのYong Shengがロッテルダムから大連へ出航した。スエズ周りだと48日かかるところを北極海経由だと35日で到達できる見込みだという。北極海には世界の30%の未発見のガスと13%の石油があるといい、コストが下がればこれらが開発される可能性もある。

**3大アライアンス、ヒースロー空港に留まる意思は変わらず

混雑するヒースロー空港を巡って現在三つのオプションが検討されている。3つ目の滑走路、ガトウィックの拡張、ロンドンの東に新しいハブ空港を作る案だ。しかし3大アライアンスはヒースローを引き続き使用することを望んでいる。ヒースローのように大きな空港の利便性に対し、ビジネス客はプレミアムを乗せるからだ。

**好調なモバイル企業

1年前までFacebook,Google,Pandoraといった企業は投資家からデスクトップからもモバイルへのシフトに適応できるか疑問視されていた。しかし現在となってはそれは杞憂に終わっている。インターネットラジオのPandoraは115%、ローカルビジネス評価のYelpは175%、Facebookは50%,Googleは28%とそれぞれ上昇し、市場平均を大きく上回っている。Twitterはこの流れの中IPOを行うことになる。

**日経平均は95円安の13519円

夏相場で閑散。出来高も今年最低。マザーズは総崩れ。海外は金が反発し金鉱株も上昇。