2013/09/19

ストリート・スマート Jim Rogers(1) 大学、農業 名門校はバブル 一次産品の値段は上がる


娘たちに何か一つだけ残せと言われたら、夢見る勇気を残してやりたい。情熱を追い求める勇気、失敗してもまたチャレンジする勇気だ。本当の失敗とはただ1つ、やってみようとしないことである。間違った問いとは1つ、何も問いかけないことである。

すっかり有名になったジム・ロジャーズの最新刊。今後の世界の見通しとともに、これまで触れられてこなかった彼の半生、そして2人娘の教育などにも触れられている。どの話もとても面白く色々と参考になると思うので引用していたら、量が多くなったので数回に分けて紹介したいと思う。

今回は大学と農業。

我々の世代は教育だけは、という親世代の流れを汲んでここに至るがこれもバブルといえなくもない。教育とはなにか、というのを定義するのは難しいだろうが、教育はなにも学校で受ける必要はないという視点を確保しておくのは大きいだろう。

農業も高齢化が主張されて久しいが、需給の法則が働くならば富める国の若者がやっても良い値段まで価格が上昇するのは理屈に適っているといえる。

毎日の変化は小さくとも10年で見れば大きな変化。長い視点を確保したい。

1.大学
2.農業
3.アジア
4.アメリカ、EU、ロシア、ブラジル、インド
5.投資
6.経済
7.人間、子供


1.大学

・ハーヴァード、プリンストン、スタンフォードといった大学はおそらく破綻に向っている

・現在アメリカだけで年に20万人以上のMBA学位の取得者が生まれているが、1958年のアメリカででは5000人だった。今後数十年の間にMBAの価値はなくなるだろう。学位をとるなど時間と金の無駄だ。

・今日、アメリカの高等教育機関を大々的なバブルに陥れている例外的措置の一つが終身在職権である。7年働ければ終身雇用が約束されるような職業は、世界のどこにも存在しない。

・何であれ、いま起きているバブルに足を踏み入れるようとすると、必ず正当な理由と確かな根拠を突きつけられる。3,4年もすればプリンストンに通う基本的費用だけで年間6万5000ドルはかかるようになるだろう。

・ただ教わるだけを求めるのであれば、良質の教育を与えてくれる場所は大学以外にもたくさんある。今の大学が売り込んでいるのは有名ブランドのレッテルに過ぎない。景気が低迷していくると、大した教育も与えてくれないところに多額のお金を払える人の数はどんどん減ってくるはずだ。

・アメリカ人学生は一流大学に通うために教育ローンを組まねばならず、卒業するとき20万ドルの借金を抱える。アメリカでは無一文になっても教育ローンのお金だけは帳消しにできない。西洋にそういった問題がある限り、西洋で入学志願者を集めるのはきわめて難しくなるだろう。

・アメリカのエリート大学はいまや破産寸前の状態だ。問題になっている基金の大半の構成が簿価で評価されている。

・エリート大学の中には、完済しなくてはならない債務を抱え、創設以来初め貸借対照表に負債を記すことになった大学が数校ある。経営状態が良いときには何ということもないが、悪いときが厄介でさらにお金が必要になる。表面には出てこないこういった多額の経済的負担がどの大学にもあるのだ。

・年金制度も同じで、州や市の年金制度の多くが破産状態だ。次の下げ相場になったら、さらに多くの破綻を目にするだろう。ハーヴァードやプリンストンやスタンフォードが破産したら世界中に大衝撃が走るだろう。

・負のスパイラルに入り込み、みなが悟ったときには手遅れというのがいつものパターンだ。そんな例を嫌というほどみてきた。

・テクノロジーがもたらす創造的破壊と馬鹿げた持続不可能なコスト構造によって、新たな学問の場、新たな教育スタイルが生まれるはずだ。モロッコ、ティンブクトゥ、ポルトガル、イタリア、アジアなどにあり、今は忘れ去られた世界屈指の大学名を挙げれば枚挙にいとまがない。

2.農業

・今は農学より広報を、鉱山学よりも体育を学ぶ人の方が多い。しかし、金融よりも農業の方がはるかに働きがいのあるセクターになる日がいずれ訪れる。

・今、世界の一次産品市場は長期的な上げ相場にある。この上げ相場はあと数年続くだろう。

・作物を育てて利益が出るレベルまで価格が上がらなくては、老い先短い世界の農業従事者の後継者は現れない。価格は上昇しなくてはならないし、上昇するはずである。近年、世界では商品の需要が供給を上回っている。在庫量は歴史的低水準で消費量の14%まで落ちている。

・近い将来、食品の価格は上がるはずである。小麦がたった3ドルにしかならないとぼやく農家が、育てるのに4ドルかかる小麦を生産するわけがない。だが、もし小麦価格が8ドルになれば、世界中の小麦農家や小麦を栽培していない農家ですら小麦を作ろうと思うだろう。

・ソ連の人々が物を手に入れられなくなってしまったのは、旧ソ連の共産主義者が需要と供給の法則を覆そうとしたからだ。ソ連にものがなかったのは作る人間がいなかったからであり、作る人間がいなかったのは値段が安すぎたからである。

・市場の裏をかこうとした人間は成功したためしがない。なのに政治家は無視しようとする。近い将来、彼らは食品の価格を統制するはずである。数千年間やってきて何の効果もなかったのに、政治家は相変わらず価格の統制をやめようとしない。

・世界中で食品の価格が上がれば人々の不満はさらにつのり、つぶれる政府、崩壊する国家が増えていくはずだ。エジプトも民衆不満は政治よりも、インフレ、失業、家計の圧迫、食品の値上がりだ。現在では中東の出来事だが、今後は他の地域でも起こってくるだろう。

**景気回復の不均衡

アメリカ家計所得の中央値は5年連続で低下し1989年よりも低い水準である。2012年の家計所得は51017ドルで2007年よりも-8.3%低い。経済全体では2007年よりも現在の方が5%大きく、2009年の最も低かった時期よりも10%大きい。しかし労働市場の回復は見られなく、それ故に賃金の上昇が抑えられ、また良い仕事に移れない。2012年の所得トップ1%は所得を20%増加させたのに対し、残りの99%は1%に過ぎなかった。

**Tesla、3年以内に自動運転へ

Tesla MotorのElon Muskは3年以内に自動運転を開始するだろうとの見通しを語った。日産は2020年にその導入を発表していたが、全ての環境で自動走行というのは望みが高すぎるとして、90%の状況で導入しフル走行との架け橋になるという。Teslaのウェブサイトでは、車の意思決定、側面と縦の制御技術者を募集している。Googleとの提携も予想されている。

**韓国における外交人労働者

過去10年で韓国では3D jobs(dirty,difficult,dangerous)を中心に外国人労働者が大きく増えた。しかし契約は最大で9年、永住させないために年に10ヶ月まで、妻や子供を呼び寄せてはいけないなどのルールがある。それでもインタビューでネパール人は本国だと月に200ドルだが韓国では月に2000ドル稼げるといいそのうちの85%を仕送りにしているという。韓国では出生率が1.2という低い状況が今後も続くと見られている。