2013/11/27

ローマ人の物語 終わりの始まり 上


マルクス・アウレリウスの自省録が良かったので、彼を記述してある部分だけを読むが、塩野節が炸裂していてやはり面白い。

賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ、という格言があるが、私の考えでは、賢者の側にいたければこの両方ともが不可欠である

歴史、書物と言い換えても良いが、これを学ぶ利点は、自分ひとりならば一生かかっても不可能な東西古今の多くの人々の思索と経験までもが追体験できるところにある。

一方、自分自身の経験は、追体験で得た知識を実際にどう活かすか、または活かせないか、を教えてくれる役に立つ。つまり机上で学んだことも、実体験とかみ合わせることではじめて活きた知識になる

格言や当たり前のこととされているところにも、きちんと切り込んでいくのが著者の魅力。この文に関して言えば、机上と経験とによって得た知識こそ本物ということであろう。片手落ちでは意味がない。

一般の人よりは強大な権力を与えられている指導者の存在理由は、いつかは訪れる雨の日のために、人々の使える傘を用意しておくことである

ここは非常に重要な指摘だと私も思う。推理物で犯人に犯罪をさせないような行いというのは、事が起きないだけに人に評価されにくい。にくい、というのは一部はするのだが、それは非常に非常に少ないということ。

著者によればハドリアヌスはこの点を行ったが、マルクス・アウレリウスはしなかたったという評になる。しかし真面目さは買っており、なにより最前線に行く機会を与えられなかったということにその原因を見ている。

晩年、実際に前線いくようになってからは、実地経験の不足をきちんと認識しているのはマルクスが普通の人物でないことを指し示してしていると思う。


問題意識を共有することは、社会上の地位の高低ではなく、もつ知識の量でもなく、このような事柄に対する感受性の問題ではないかと思う

天才とは、他の多くの人には見えないことまで見ることのできる人ではなく、見えていてもその重要性に気付かない人が多い中で、それに気付く人のことなのであった

この気付くというのは個人的なテーマで触れられていて嬉しい。気付けないものには、アクションのとりようがない。問題を問題として前景化することができれば解決策を考えるが、そうではなければ何も行えない。従ってこの能力こそが本当に大事な能力なのではないかと思う。

問題はこの能力はどうやって身に付ける、身に付けたかということだ。


ローマ人は仕事を朝早くからはじめた。そして一日を仕事と余暇に二分し、午前中しか働かなかった

12時を境として午後は余暇と考えれば、土日のみを休みとする生活とは違った様相を呈してくるのではないだろうか。個人ではこれが可能なので役得である。おそらく著述業もこれに近いのだろうと推測される。

このうえなく従順で、このうえなく情愛不覚、そして何よりも、まったく飾らない女であった マルクス・アウレリウス

飾らないという女。考えさせられる部分だ。

人間は公正であり善良でありうるかなどと、果てしない議論をつづけることは許されない。公正に善良に行動すること、のみが求められるときが来ている マルクス・アウレリウス

何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。だから他の人々も、そうであって欲しいと当然思っている カエサル

偉人の言葉は力強く、読んでいて清々しい。

・以下抜粋

マルクス・アウレリウスは古代人の倫理の最上の発露であり、高貴な魂の真摯な叫びであるというのが、西欧近代の知識人たちから寄せられた賛辞であった。

啓蒙主義を経験して後の近現代の知識人にとっては、マルクス・アウレリウスこそが、プラトンの理想が史上一度だけ実現したケースに思えるのだろう。

社会的にも経済的にも最上層に生まれたマルクスは、当然と言う感じで、他の多くの子供たちのように街中の私塾に通うのではなく、家庭教師から教育を受ける

興味深いのは対話の訓練を重視したことである。dialogusで学ぶことの第一は、自分とはちがう意見があることを知る事である。それをわかってはじめて、自分とは意見を同じにしない人に対しても、その人を説得するに必要な話し方を会得することができる

自らに課せられた責は十全と果たしたと思える最高権力者にとって唯一残された責務は後継者を決めることだ

人間には、他者を押しのけたり排除したりしてまで昇進することが、死んでできない人がいる。マルクス・アウレリウスも、この種の人間の一人だった。

自己中心主義者のほうがかえって、徹頭徹尾誠実である人の効用には敏感なものである

ハドリアヌスが統治したローマ帝国はコスモポリタンな国家であった。家庭教師もそれを反映しているが、興味深いのはマルクスに教えたのがそれぞれの出身地方とはまったく関係ない学問であり、エリートとしての生き方にあったところである

最も重要なことは、相手が伝えようとしている内容を知ることであり、伝え方など二次的なことだということ

相手の語法やアクセントの誤りは絶対に直してはならないという押しの理由が、統治者の前で沈黙するような人が多いようではかえって統治者側の利益にならないというのだから立派だった

ラインとドナウの防衛線に兵力を集中できたのも、背後に控えるガリアの安定を抜きにしては考えなれないことであった

頭と手足がともに想いを共有している組織は、健全であり、ゆえに強いのだった

ローマの国境は閉じた国境ではなく開かれた国境と呼ばれるべきもの

物産の交流によって、蛮族の略奪欲を低下をさせるという立派な戦略。セミ・ローマ化

ハドリアヌス帝に贈られた後世の評価の一つは、効率追求の鬼というものであった

ハドリアヌス帝が偉大であったのは、帝国の再構築が不可欠とは誰もが考えていない時期に、それを実行したことであった

優れた人格者と優れた政治指導者は、重なり合うとは限らない

法は、誰にとっても平等に執行され、個人の権利も言論の自由も保証される。この目標の達成にこそ、臣下全員の自由の保証を常に心がけることを基盤にしての、帝政の存在理由がある

ポポロが何より関心をもつのは、安全と食の保証である

晩年のハドリアヌスが怒りっぽく気難しくなり、誰からも敬遠される存在になってしまったのも、自らの成した大事業への理解者を、それを理解できる能力のある人々の中にさえ、もてなかったことへの、絶望と怒りではなかったかと思ってしまう

アルメニアをローマの同盟国にすることによってパルティアを牽制するのは伝統的なローマンの政策

パクス・ロマーナは反対する側から反対の理由を奪ってしまったのだ

執政官に選ばれる年齢にはまだ間のあるこの世代と面識をもつ場所は、ローマから遠く離れた軍団基地でしかなかったのである

マルクス・アウレリウスの同世代からはじめって一世代下あたりまでのローマの元老院階級に生まれた男たちには、本国イタリアの外に出たこともなければ辺境の軍団基地ぐらしもまったく知らない人が多すぎる

軍団長の地位に、ローマ社会では第二階級になる騎士階級出身者が進出してくる時代もこの時代からになる

ローマの指導者たちも、さまざまに異なる気候の属州を経験していったことで、肉体をそれに慣らすことができたのであろうと思う

ローマ軍は伝統的に、緒戦で敗北を喫した場合でもあわてて反撃に出ることはせず、反攻の準備に時間をかける

法律の制定や改正を追うと、当時のローマ社会が何を必要としていたかがわかる

立候補者減少の原因をアパティア、無気力という言葉で表現している。個人主義が浸透しはじめていたのかもしれない

ユダヤ教やキリスト教のような一神教は、人間に生きる道を指し示す神だが、ギリシアやローマ人は神々にそれを求めない。この不幸から脱出するためにわれわれ人間は懸命の努力を払うから、どうぞ、神々も、このわれらを助けてくださいという

公生活に参加することこそ市民の義務であるとする考えがまだ勢いを失っていないこの時代、キリスト教徒の参加拒否は充分に非難の理由になった

饒舌な書物は、それだけで警戒の要がある マルクス・アウレリウス

後世は、ローマ帝国盛期を代表とするストア派の哲学者として、奴隷だったエピクテトゥスと、皇帝のマルクス・アウレリウスに二人をあげることになる

戦闘の指揮は彼らにまかせても、その種のことを知らないで一任するのと、知っていて一任するのとではちがいは大きい。どうやらこの時期、マルクス・アウレリウスは、自らの実地体験の欠如を強く意識したようである

自分自身の欠陥を認めるやそれをおぎなう努力を惜しまなかったところもまた、マルクス・アウレリウスが賢帝とされる由縁である

賢母と良妻は必ずしも一致しないことくらい、女ならば誰でも知っている

夫婦生活が幸せに終始したであろうと想像する理由のもう一つは、この四年後に皇后ファウスティーナは、ドナウ河に行ったきりの夫の後を追い、そのままずっと、死ぬまで夫の許に居続けるからである

ドナウ河防衛線は常に、帝国の体調を測る計器であった

**Rafsanjani、包括的な合意を望む

イランでもっとも影響のある政治家の一人のAkbar Hashemi RafsanjaniがFT紙のインタビューに応えている。これは非常に稀な出来事だ。その中でRafsanjaniは、1年以内にいまの6ヶ月の暫定合意から包括的な合意にしたいと述べた。これに対してアナリストは次のステップは核開発が続くと思っているイスラエルを説得するのが難しいので困難であるとみる向きもいる。原油はこの暫定合意をめぐって下落したが、短期的に輸出が増えるわけではないというのもあり値を戻した。

**タイで反政府運動

反政府運動がバンコクで起こり財務省や外務省前になだれこんだ。反政府運動はThaksinレジームから脱却を目指している。しかし議会では繰り返しThaksinの恩赦法案がだれており、今月も最終的には取り下げたものの議会は提出している。

**韓国のポップカルチャーが化粧品輸出を援護

韓国の化粧品メーカーAmorePacificの海外売上は対前年比で+35%の4430億ウォンとなっている。韓国ドラマの女優や歌手の効果が出ているようだ。同社では2020年までに5兆ウォンの売上を達成したいとしている。しかし中国ではL'Orealの16.8%、資生堂の10.3%、P&Gの9.8%と比較し3%のシェアしかない。また利益も先行投資のおかげで4.2%とライバルの13%に見劣りする。アジアではブランド名の弱さに打ち勝ったが、それ以外のところでは苦しい戦いが行われている。