2013/11/29

カオスと情報とインテリジェンス


前作の続編で第8章にあたり、インテリジェンスやプロパガンダ、囚人のジレンマ、教育、チーム編成についてなどを論じている。

簡単にまとめると、プロパガンダに対抗するにはインテリジェンスが必要であり、用いる戦略としてはしっぺ返し戦略が有効。またチームは人類史上最大の発明であるから有用に使うこと。その為にはコミットが大事である。

核となるのは前作から引き続き、仮説検証の大事さであり、それがインテリジェンスやリーダーには必要な要素であるという点だ。

スポーツや芸術の天才は今いるあなたの視点で大きな姿に見える。しかしメタの天才(卓越したリーダーシップを持つ人)の場合、幽体離脱したように上あるいは垂直からでないと見えない。

私たちは自分の座標軸xに事象や人物を射影して評価する。例えばM(x)だ。メタの天才の評価はM'(x,y)やM'(x,y,z)なのだ。私たちはy,z評価軸(次元、平面)があるなんて気付かない。

リーダーとなる人はこのような不可視の座標軸が見えているからこそ事象や人をM'(x,y)やM'(x,y,z)で評価できるのである。

場合によっては数式にして抽象化すると理解が深まるのかと気付かされた部分。

チームは単なるマシンではない。高速モデリングシステムなのだ。

最終設計者はアーキテクトだが、それが完成するまでメンバー間で議論、検討する必要がある。実はこのプロセスが最も重要で、これを通じてメンバーがミッションを自分のものだと考えるようになる。ミッションオーナーになるのだ。

コミットとは「俺に任せろ、お前に任せた」という相互信頼(約束)である。一蓮托生の覚悟が出来ているということだ。チームにとって最重要なものだ。日本人は失敗を前提にコミットを責任と訳すことがあるが間違いだ。

著者本人が仮説検証して辿りついた、今もっているモデルなのだろうと推測される部分だ。ミッションオーナーにするくだりなんかは、チームとして非常に大事な部分だろう。

池袋ジュンクの7Fで未だ推しているのだが、ブクログや読書メーター合わせても3人くらいしか読んでいないが、とても面白い本だと言える。

・以下抜粋

実験好きのノイマンは、科学とはモデルを造ることであると言っている。

インテリジェンスとは、エレガント(選り抜き)なデータの事だ。知らしめられた情報、解決済みの情報(インフォメーション)とは似て非なる素材(データ、データチャンク)に関するものだ。

神は神託の排他的独占権をメディアに許し、メディアは神に仕え与する。お互いに利益が一致するステークホルダーなのである。

メッセージが伝えるのは、たとて正しく伝えたとしても、毛曲すべての部分的真実(断片)についてものである。この断片から全体像を描くには自身のインテリジェンスが必要となる。

ニュースとは、重要な心出来事の注目すべて新情報つまり、インフォメーションのことである。そこで問題は、重要だ、注目しろ、という評価(重み付け)は誰がするのか、つまり情報を解釈している主体は誰か、送り手の正体と彼らの解釈は何かということである。

神のために大衆をコントロールするには神秘性が必要だ。露出が多く、目立ったりすると神秘性が薄まるからだ。したがって、自分が言いたいことを他の人、権威者やインテリ、一般大衆Bに言わせたりする。

与えられた情報に疑問を発することがインテリジェンスの始めなのである。

本当に知りたいことは、通信員が明示的に意識していない、あるいは解釈していない情報断片(諜報、インテリジェンス、エレガントデータ)である。

アルマダ海戦の欲得1589年ガリレオは25歳でピサ大学の教授になり、実験し結果を数学的に解析するという新しい科学の方法、すなわち仮説検証=モデリングを生み出している。

三浦按針はアルマダ海戦時の船長だ。

ジェントルマンの要件は、人を統治し、己を律する能力、自由と秩序を統合する才能、健全なスポーツと運動の愛好をもつ人である。

中産階級以下の子供を対象とした義務教育は、時間励行、従順な、機械的な反復作業に強い子供を育てるという隠れたカリキュラム(トフラー)や同じく日本の隠されたカリキュラム、正解カリキュラムとは好対照である。

プロイセンのシミュレーションは、作戦の失敗を仮想的に繰り返す。このモデルでの戦いを事前に評価・検討できるのである。

日本貴族にとって、失敗やそれを連想させる言葉は穢れだから避けたい。

正解大好きな日本貴族は、自身で生の情報を解釈するのが怖く(正解できないかもしれないから)、他の権威が何か言うまで、あるいは会議で決まるまで評価判断を躊躇する。

興味深いことに、正解好きの日本貴族は「ぶれない」という言葉が大好きだ。

太古の昔から、パワー(神、王、権力)の側にはメディア(霊媒師)はいるものだ。

プロパガンダとは、キリスト教伝道のために、ローマカトリック内に作られた大学のことだ。

裏切り欲求の本質は、他人をユーティリティ(欲望実現の手段)だと考えているところである。

無関心は社会的無責任ということである。関心が局所的なものであると他者には無関心になりがちだ。

とまどえる群れは、統治階層の誰かをリーダーに選んで支持し、選んだ後すぐまた客席に戻る。これが観客民主主義のいわれである。パワーツリーの真の意思決定に与れない。政治を眺め、鑑賞、批評しているだけである。

姿の見えない統治者が責任を持つのは公益に対してである。とまどえる群れは本来現実の生身の主役なのに勘違いさせておけばいい。

メディアによる選挙戦のネガティブキャンペーン技法、相手の弱点を嘘でも言い続けるは昔の呪文や呪いと同じだ。

統治者は愚かな民は真実を見ず、事実を知らず、理解できない方がよいと考えている。言い換えると、民は愚かだと考えていること、民は愚かなままでいるのが良いと考えているということ。

イギリスがインドに用いた分割統治法は、知らしめない、とまどえる群れの横暴や怒号を避けるという2つの目的を達した。

分割統治法の主目的は、真実を知った被統治者間のコミュニケーションを断つことであった。

グロスマンは『戦争における人殺しの心理学』で、普通の人を脱感作(感受性の低下)によって戦闘マシンへと変貌させ得ることを示した。

メディアコントロールも基本的には同じ心理操作を行う。脱感作で無関心、しらけを蔓延させたり、逆に感作(感受性の亢進、過敏化)を使って恐怖や不安感を増幅させたり、熱狂を煽ることもできる。

メディアによる創作には3つのレベルがある。主観や感情が入った修飾語を使う。少し意味をずらした言葉を使う(終戦=敗戦、冷温停止、収束など)、言葉をアンタッチャブルにする(公益など)

脱感作がいよいよ進み、関心はグローバルな社会的、政治的なものから局所的なものに狭まり、特に政治関しては観客でさえないかもしれない。

現代人は自分たちの進む方向(将来)にや正当な利得に関心がないのだろう。彼らには今しか存在しないのだ。ただし彼らとは私たちのことだ。本来の感覚機能(インテリジェンス)を再感作によって取り戻さなければならない。

囚人のジレンマで最適な戦略は、しっぺ返し戦略だ。自分の方からは裏切り始めることはなく、相手の裏切りには即座に報復し、心が広く、相手にわかりやすい行動である。

相手の裏切りには即座に責めるべきなのである。そうすることは相手にとってもロングランで利益があることなのだ。

囚人のジレンマの最適戦略で注意しなければならない点は、しっぺ返ししなければならない時は、心が広く、分かりやすくすることで、報復連鎖にならないようにすることである。

4つの教育システムがある。(a)近代義務教育(産業戦士)、(b)官僚養成教育(官僚)、(c)ハンガリーの英才教育(特殊な技能、才能)、(d)イングランドとウェールズのパブリックスクール(チームリーダー)。後ろにいくほどお金や時間、人手、手間が必要だ。

(a)(b)が鋳型(正解)にはめ込む教育をして複製を造るのに反し、(c)は個人の才能を発掘したり、伸ばすことができる。なぜなら答えの修正を繰り返すプロセスはモデリング(仮説検証)の訓練に他ならないからでる。テストは手段であって結果ではない。

(c)と(b)はほんの少しの誤差、差異がたとえ考え方であっても、いずれ大きな違いに成長するというカオス理論のバーチャル版実例だ。

Quality of lifeという言葉があるが、これを教育を行う主体である社会全単に当てはめて良いはずだ。Quality of Society 社会の質である。

価値には存在自体に価値があるエッセンシャルな価値(EV)とそうではないアクシデンタルな価値(AV)がある。

教育に成功したら複製ができるだけである。問題解決や変化する環境へ適応するには、成功した教育では失敗で、失敗したら成功なのだ。ここで教育のジレンマが本質的に発生する。ジレンマには正解はない。あるとしたら均衡点だ。

吉田兼好は徒然草の中でよき友は3つ、悪い友は7つあげている。友人関係が問題解決に役立つ以上に、問題を引き起こす腐れ縁になる可能性が高いことを示している。

世界は変わるだろうか?変わる。しかし局所的時空間では比例的、直線的に変化すると見なせる。ただし、局所を離れた瞬間カタストロフィー理論やカオス理論が必要となってくるし、フィジカルな微小量子世界ではもっと不可思議な線形性が起こる。

(a)(b)は変化への対処が苦手ゆえ副作用として安定を望み変化を嫌う。特にBは囚人ジレンマゲーム、別名出世競争が行われているので失敗をみせられない。つまり試行錯誤ができない。

あいにく、グローバルな非線形世界では彼らの得意技、演繹や帰納は通用しない。彼らは原理的に環境変化に対応できず、船長としては危うい。

(a)(b)は限られた時間内に答えのある問題の正解を出す能力を持つが、その裏側では、答えの分からない問題を識別し解かない能力がある。さらにパワーツリーを登るには必ずも良い成績である必要はなく、相対的に上位であればいい。かくしてチーム精神はなくなる。

疑わしきは罰するは、間違えたことを馬鹿にされる(かもしれない)が恐ろしいのであった。つまりポリシーではなく副作用だったのだ。

(b)は他の人から間違いを犯す馬鹿だといわれるのが怖い。いい大人がこんなことを恐ろしがるなんて信じられないかもしれないが、正解教育の成果である。

もともと正解がないかおしれないものを、一回モデルで正解は出せるのだろうか。

育てたい子供の理想のメタファーは、ディジタルコンピュータ+アナログコンピュータ=高速モデリングマシンである。つまり、自立的な自己変革能力を内臓している人、特定の問題解決に優れた能力を持つ人、メンバー交換に柔軟なチームのリーダーになり得る人。

公務員の目的は、働くのが目的ではなく公務員になることであって、次の関心は退職後の職場や待遇である。

三人寄れば文殊の知恵は、高速モデリングマシン、チームが何たるかを理解し、ミッションを自分のものとしている時。

解けない問題を解く人材を育てるという問題に正解があるなら、解けない問題ない。

またチームには自由と規律という矛盾する2つのものが必要だ。

マネージャーはグループのリソースを管理し、後方支援にあたる。人を管理するのではない。ただし本当の役割は、チームをステークホルダー内の他の力から守ることである。つまり味方内の敵にチームの邪魔をさせないことである。

コーチはメンバーのパフォーマンスを最高に保つようにする。メンバーに自分の最高のパフォーマンスを普通の力と思わせる能力。

チームには寿命がる。本来、チームは使命ごとに編制すべきもので、ゴールを達成し成すべき仕事がなくなれば解散するのが正しいからだ。

アーキテクチャ(計画)をデザインするリーダーにまず求められる才能はモデリングだ。それはランクの異なる次元を自由に行き来するメタの能力を前提にしている。メタ天才の能力は垂直的能力なので、私たちには見えにくかったのは当然である。

モデリング能力、別名インテリジェンスには一次とか高次があった。それは局所や大局(大域)という切断面で見た区分けでもある。ただし局所と大局の境目は絶対的なものではなく、あなたが決めるものえもない。

ミッションを為すには、実は責任ではなく相互のコミットという概念が重要だったのだ。

グループ人数が増えれば、核分裂と全く同じ仕組みであっという間に関係が増えすぎコントロールできなくなる可能性が大だ。

**ブラジル、インフレとの戦い

これまでの6.5%の壁を破りブラジルではインフレ率があがっている。それを受け、貧困層を主に生活が苦しくなりデモが行われている。中央銀行は2009年以来4.5%のインフレターゲットを行っている。また政策金利も7.25%と過去最低にしている。しかし対ドルでの下落は輸入品価格の上昇を招き、インフレ率が上がる力になっている。

**高まる予期しない事態

中国の防空識別圏設定は、東シナ海でとってきた漁船を出し現実化してます中国人の言うキャベツ戦略と同じである見る人もいる。また海外の飛行機がADIZを認めれば中国の主張を認めることになる一方で、もし無視をすれば中国は法的にあるいは道徳的な非難を行い自らの正統性をする機会を与えることになるという。中国のこの現状を変更しようとすることは周辺諸国との平和の促進努力を駄目なものにするだろう。

**REITに投資すること

新高値を更新する株の脇でREITは5月の高値から-10%の下落を示している。REITは借入で事業を行うので金利に敏感だからだ。REITはは現在チャンスなのか否か。二つシナリオが考えられる。一つは3月とみられているtaperingで金利が上昇する場合。この場合は投売りがある。二つ目はFRBが低金利に誘導に成功した場合。この場合はREITは再び人気化するだろう。