2013/12/17
ねじまき鳥クロニクル
ようやく読み終わった。さすがに三巻ものだとなかなかに量が多い。
どうしようもないもの、あるいはある種の傾向の話。今回で言えば綿谷家に存在するその傾向が中心となるだろうか。
間宮中尉の生涯にみてとれるように、一般的な運命論とは違った意味、結局は他のなにかを通過させるだけの入れ物のとしての肉体。自由意志と思っているのもそのなにかの発現に過ぎないのではないかという諦観なのだろうか。
いずれにしろ、そういったものを自覚できる人物とその関わり合いのようなものがやはり村上作品のテーマだと思う。
これは読後に思ったが、そのここでは傾向としておくが、その傾向との関係性を描いているのだと感じた。
『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』では、その傾向にうちに留まることを、『ダンスダンスダンス』のメイはそれがなんだっていうの、『ノルウェイの森』では直子とキズキの死とワタナベとミドリの生、『国境の南、太陽の西』では傾向をもった同士の永遠の平行線という悲哀。といった具合に。こういう自分が感じているニュアンスを書くというのは本当に難しいがとりあえず。
今回のねじまき鳥であれば、綿谷ノボルが意識的にその傾向を引っ張り出すというものに特徴を感じた。またそれに伴うクミコの絶望か混乱、あるいは破壊。
また登場人物の多さで描こうとしているのも特徴になるだろうか。間宮中尉、本田伍長、マルタ、クレタ、ナツメグ、シナモン、笠原メイ。みんな人物が立っている。
個人的には声を発することを止めたシナモンはここまでの作品では屈指の存在だと思う。言葉を発しないのに存在感がある登場人物というのも考えてみれば面白いものである。
ナツメグにしろ主人公にしろクミコにしろ、そのある種の傾向があるということとそれに付随する擦り減りというは恐らく避けられないのかもしれない。その擦り減りとの関係性とも言えるのかも。
間宮中尉の味わったものも身に染みる。
ということで次は『スプートニクの恋人』。こちらは一冊なので気持ちが楽!
それからやっぱり読んですぐが一番楽に感想かけますね。まずは書いてしまう。印象が変わったらまたその都度、その変わったのをすぐに書いてみるのが一番なのかも。
追記。『スプートニクの恋人』でもギリシアに行く。その中で、ギリシアの島々は貿易の中継地とあった。クレタとマルタもその中継、ただの入れ物、という意味なのかもしれない。となるとコルシカはなんであろうか。コルシカといえばナポレオンだが。
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