2013年12月21日土曜日

海辺のカフカ


とても真っ当なものを読んだというのが第一印象になる。

村上春樹の世界観を経由しているものの、扱っているのは少年の成長に関するものだろう。ベタといえば非常にベタで王道だ。

だからこそ逆に作家の力量が存分に発揮されるという意味では、著者にとってもがんばって書いたものになるのかもしれない。そういう意味で、ひとつ自分の技、型があるというのは視点を増やせるという意味で心強そうだ。

作風が少し変わったと聞いていたが、それはこの成長することをはっきり前面に出したことによるものであろうか。人によっては押し付けがましいと感じる点があるかもしれない。

個人的には、その描き方や掘っている深度のようなものはとても素晴しいものだと思う。いくつか引用してみる。

何かを経験し、それによって僕らの中で何かが起こります。化学作用なものですね。そしてそのあと僕らは自分自身を点検し、そこにあるすべての目盛りが一段階上にあがっていることを知ります。

頭をつかって考えるんだ。どうすればいいか、考えるんだよ

ただ観察する理性から行為する理性へ飛び移ること

正しいことであれ、正しくないことであれ、すべての起こったことをそのまま受け入れて、それによって今のナカタがあるのです

死と二人きりで向かいあって、知りあって、乗りこえていくんだ。その渦の底で君はいろんなことを考える、ある意味では死と友だちになり、腹をわって話すことになる

最後の大島さんの兄のサダが言う言葉は、男子がどこか経験しなくてはらないもの。『乗り越えなくてはならない課題』を乗り越えるには、『柔軟な好奇心に満ちた、求心的かつ執拗な精神』も必要だろう。

このような部分は、カフカや星野さん(ナカタを受け継ぐ)が男性であることもあって、男性向きの作品なのかもしれない。

それと田村カフカの年齢は15歳という設定であったが、これは結構絶妙だと思う。この頃に『乗り越えるべき課題』にめぐりあえないと、わりと『うつろな人々』や教条主義的で想像力の無い図書館に来た女性二人組みのようになりやすいような気がする。

カフカはその点、カラスをはじめとして周りに自分で考え、乗り越えることを示唆され

佐伯さんはそのとき、どんな恐怖と怒りを心の中にもっていたんだろう?それはどこからやってきたものなんだろう?

と考えるようになる。これはこの物語の中でもっとも成長した証しではないだろうか。

想像力の無い人に殺された彼氏がまず一番。次に自分を損ない続けることになった佐伯さん。そして三番目にその佐伯さんに捨てられたカフカが成長し、彼女を許すという構図になり世界をつなぎとめる。そういう話にも当然なっている。

佐伯さんはやっぱり『ノルウェイの森』の直子が生き残ったバージョンとしてと被るのは致し方ないところだろうか。最後のナカタさんによって円が戻ったという死はなかなか良いと感じた。

海辺のカフカの歌詞は、森の奥の佐伯さんが詠んだものだろう。外の兵士のくだりがしっくりくる。

他で気付いたのは、川、潮、森、わき出る水、雨、雷、岩、影について思う、というくだりがあったが、これなんかは村上作品で良く出てくるもので、こういったものをメタファーとしながらも、自然という現実と関連させて書いているのかなと。今回は主に雷だった。その一発で時間が止まったという感じだろうか。

どのように生きたよりも、どのように死んだか。このようなテーマも言われるとはっとする。これについてはしばらく考えてみたい。

上下で結構厚いが、字が大きく見かけほどではないのに加え、ナカタさんの部分が良い意味で息を抜いて読めるのでとても読みやすかった。

これで一応、目標までは読めた。残る長編は、『アンダーグランド』、『1Q84』、『多崎つくる』の3つ。さすがにちょっと時間が足りないので、これらはゆっくり読んでいこうかしら。


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