2014/03/13

電王戦公式ハンドブック


プロ棋士とコンピュータ将棋が戦う電王戦は今週の土曜から5週連続で行われる。

今回はハンドブックが出ているところを見ると世間の注目も本当に高くなったのだと感じさせられる。いくつか興味深い点があったのでつらつら書いてみる。

様々な出場動機

基本的には棋士側が失うだけの非対称な戦いなのでなぜ出るのかと個人的には思っていたが、予選もなく立候補して選ばれればそれだけで華やかな舞台に立てるという理由があった。20歳で棋士になり仮に60歳まで40年のプロ生活をやっても、注目を浴びることとは無縁なのだなと。

小さい頃から将棋をやってきて、それでいてタイトル戦に絡めなく長いプロ人生を歩むというのは、外からみているよりも難しい感情があるのだろう。一度くらい華を咲かせたいと思っても無理はない。

一方で将来有望な豊島七段などは前回の船江五段が強くなっているのをみて、過去にA級に在籍していた森下九段などは加齢による意欲などの衰えを非常に粘り強いコンピュータ将棋と指すことがトレーニングになるのではないかとしている。

それぞれの位置などによってリスクもリターンも変わってくる。

コンピュータの強さ

序盤は今のところまだプロ優勢、終盤も詰み筋に入らなければそれほど人間との差がない。むしろ人間は長手数の詰みを発見できる。しかしプロが口を揃えて言うには中盤が強いとのこと。人間が序盤でリードを奪って、中盤でどれだけさを詰められるのかが勝負の流れとなりそうだ。

コンピュータが読む量

だいたいどのソフトも1秒間に400万局面らしい。おおよそ20手から30手先まで。

ちなみにオセロは1局が最大60手で、25手くらいまでは定跡があり、終盤は時間をかければ30手ぐらい読みきれるとのこと。

ソフトウェアの進化

局面が良いか悪いかといった評価関数は機械学習によって大きく前進した。最近同じように進化したのはチェスのストックフィッシュというアイデアの導入のようだ。簡単に言えば、最初に良さそうな手以外はほとんど読まないという大胆な枝刈りの手法。

最近スマホがグランドマスターに勝ったという話があったが、毎秒2万手も読めなかった。ディープブルーの時は2億手だったら、それだけソフトウェアが進化したということ。

持ち時間

今回は4時間から5時間に変更されたが、人間は終盤に時間を残せるという部分もあるが、集中力が続かないという意見も。

また今回は対戦するソフトを事前に提供され練習することできるが、練習の頻度などを考えると持ち時間が短い方が練習しやすく人間が勝ちやすくなるのではないかと。

予想とか

今回は棋士側に本番に使用するソフトウェアが提供されることになった。これは議論を呼んだようだがまずまずフェアなのではないかと思う。

棋士はコンピュータとだけ指すのではないし、コンピュータも機械学習にプロの棋譜を利用しているし、疲れない。そこらへんを勘案するといい落としどころのような気もする。

勝敗としてはどうだろう。人間にはもちろん勝ってもらいたいが、コンピューターの粘り強さを考えると人間が2勝くらいだろうというのが予想になる。

電王戦は本当に手に汗を握る戦いになるので今から週末が楽しみにでならない。